• M&A
会社売却を検討していることは誰に伝える?M&Aにおける情報管理と秘密保持

会社の売却やM&Aを検討し始めたとき、経営者が気になることの一つが「この話を誰に、いつ伝えるべきか」という問題です。

従業員に知られたら不安を与えてしまうのではないか。取引先や金融機関に情報が伝わることで、今後の事業に影響が出るのではないか。

M&Aでは、会社の財務情報や取引先情報など、外部に知られたくない情報を買い手候補に開示する場面があります。そのため、情報をどの段階で、誰に、どこまで共有するのかを慎重に判断することが重要です。

今回は、M&Aにおける情報管理と秘密保持の基本、従業員や取引先への説明のタイミング、実際のM&A案件で起こった事例などを紹介します。

1.M&Aの情報管理が重要な理由

会社売却を検討していることが、意図しないタイミングで社内外に伝わると、さまざまな影響が生じる可能性があります。

例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 従業員への影響: 雇用や待遇、職場環境の変化を心配し、退職を検討する人が出てくる可能性がある。
  • 取引先への影響: 経営体制や取引条件が変わるのではないかと不安を与え、取引関係に影響する可能性がある。
  • 金融機関への影響: 経営状況や今後の事業方針について、不要な懸念を生じさせる可能性がある。
  • 競合他社への影響: 会社の売却を検討しているという情報が、競争上不利に働く可能性がある。

もちろん、M&Aそのものが悪い影響をもたらすわけではありません。しかし、情報が十分な説明のないまま広がると、関係者の誤解や不安につながることがあります。

そのため、M&Aを検討する段階から、情報を共有する相手や範囲を明確にしておくことが大切です。

2.従業員や取引先には、いつ伝えるべき?

M&Aを進めるうえで、従業員や取引先への説明をいつ行うかは、慎重に判断する必要があります。

一般的には、交渉の初期段階で広く情報を共有するのではなく、基本合意や最終契約などの進捗、関係者への影響を踏まえながら、適切なタイミングを検討します。

ただし、すべての案件に共通する正解があるわけではありません。譲渡の方法や会社の状況、従業員の役割などによっても判断は異なります。

例えば、株式譲渡の場合、会社そのものが存続するため、雇用契約も原則として引き継がれます。一方、事業譲渡の場合は、従業員の雇用契約を引き継ぐにあたり、個別の同意が必要となるなど、対応が異なります。

いずれの場合も、従業員にとっては、自分の雇用や働く環境に関わる重要な話です。説明するタイミングだけでなく、誰が、どのような内容を、どのように伝えるかも考えておく必要があります。

取引先や金融機関についても同様に、取引関係や契約内容、今後の事業運営への影響を踏まえ、必要な説明の時期や範囲を検討することが重要です。

3.実際のM&Aでも、関係者への情報共有が難しい場面があります

実際に当社が仲介を担当したM&A案件でも、関係者への情報共有の難しさを感じる場面がありました。

ある株式譲渡案件では、基本合意の締結後、最終契約・クロージングを迎える前に、売り手企業のキーパーソンと買い手候補企業の代表者が顔を合わせる機会を設けました。

この面談は、双方の経営者が了承し、希望したことを受けて実施したものでした。

ところが、実際に顔を合わせた際、キーパーソンは買収に対して強い抵抗感を示し、退職の意向を口にするなど、想定していなかった事態となりました。

その後、双方の経営者が本人の気持ちや懸念に向き合い、誠実に話し合いを重ねたことで、M&Aは引き続き進められることとなりました。

この事例からも分かるように、経営者同士が合意していても、会社を支えてきた従業員やキーパーソンが、同じようにM&Aを受け止めるとは限りません。

会社の将来や自分自身の役割、雇用環境の変化に不安を感じることは、決して不自然なことではありません。

関係者と顔合わせを行う場合には、事前に本人へ説明し、面談の目的や話す内容を共有しておくことも大切です。また、相手の立場や気持ちを考慮し、疑問や不安を受け止められる場を整えることも重要になります。

M&Aでは、契約条件をまとめるだけでなく、関係者の理解や協力を得ながら進めていく視点も欠かせません。

4.秘密保持契約(NDA)とは?

M&Aの交渉では、買い手候補に対して会社の情報を開示する必要があります。

その際に重要となるのが、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)です。

秘密保持契約とは、情報を受け取る側が、開示された情報を第三者に漏らしたり、定められた目的以外に使用したりしないことを約束する契約です。

M&Aでは、買い手候補に会社の詳細情報を開示する前に、秘密保持契約を締結することが一般的です。

契約内容には、例えば次のような事項が含まれます。

  • 秘密情報の範囲: どのような情報を秘密情報として扱うのか
  • 情報の利用目的: M&Aの検討など、情報を利用できる目的
  • 第三者への開示制限: 情報を開示できる相手や条件
  • 情報の管理方法: 情報の保管や取り扱いに関するルール
  • 情報の返還・廃棄: 交渉終了後の資料やデータの取り扱い
  • 秘密保持義務の期間: 秘密保持義務が継続する期間

秘密保持契約を締結することで、情報の取り扱いについて当事者間のルールを明確にできます。

ただし、契約を締結すれば情報漏えいが完全になくなるわけではありません。開示する情報の範囲や相手先、資料の管理方法などについても、慎重に対応する必要があります。

5.買い手候補には段階的に情報を開示する

M&Aでは、最初から会社の詳細情報をすべて買い手候補に開示するわけではありません。

一般的には、交渉の進捗に応じて、段階的に情報を開示していきます。

① 初期段階:匿名での概要説明

最初は、会社名や具体的な所在地など、会社を特定できる情報を伏せたうえで、事業内容や売上規模、従業員数、事業の特徴などを伝えます。

買い手候補が関心を持つかどうかを確認するための段階です。

② 秘密保持契約の締結後:詳細情報の開示

買い手候補が具体的に検討を進める場合は、秘密保持契約を締結したうえで、会社名や詳細な財務情報、事業内容などを開示します。

③ 基本合意後:デューデリジェンスに必要な情報の開示

基本合意後には、買い手側によるデューデリジェンス(買収監査)が行われます。

財務・税務・法務・労務など、さまざまな観点から会社の状況を確認するため、必要に応じてさらに詳細な資料や情報を開示していきます。

このように、M&Aでは交渉の段階に応じて情報の開示範囲を広げていくことが基本です。

6.情報漏えいを防ぐために意識したいこと

M&Aの情報管理では、秘密保持契約の締結だけでなく、日頃の情報の取り扱いにも注意が必要です。

特に、次のような点を意識しておきましょう。

  • 情報を共有する相手を限定する: M&Aに関与する必要がある人に絞って情報を共有する。
  • 資料の管理を徹底する: 財務資料や顧客情報などを、誰でも閲覧できる場所に保管しない。
  • 会社を特定できる情報に注意する: 初期段階では、会社名や所在地などの情報を伏せて検討を進める。
  • 専門家と連携する: 仲介会社や弁護士などと相談し、情報開示の範囲や方法を確認する。

M&Aでは、会社の価値を正しく評価してもらうために、買い手候補へ一定の情報を開示する必要があります。

一方で、情報を開示することにはリスクも伴います。必要な情報を、必要な相手に、適切なタイミングで共有するという意識が大切です。

7.会社売却を決める前でも、ご相談いただけます

「会社を売却するかどうか、まだ決めていない」
「従業員や取引先に知られずに相談したい」
「どのタイミングで、誰に話せばよいのか分からない」

このような段階でも、M&Aについて相談することは可能です。

会社の売却を検討する際には、譲渡価格や買い手候補だけでなく、従業員や取引先への説明、情報管理など、事前に考えておくべきことが数多くあります。

Sky Okinawa株式会社では、沖縄県内の企業を中心に、M&Aや事業承継に関するご相談を承っています。

具体的な売却を決めていない段階でも、まずは現状やお考えをお聞かせください。秘密保持に配慮しながら、今後の選択肢を一緒に考えてまいります。

会社の将来や事業承継についてお悩みの経営者様は、お気軽にご相談ください。